【実例あり】相続登記をしないと面倒なことに!?所有者不明土地の増加問題/不動産登記義務化

工務店に勤めていますと、友人知人から不動産の相談を受けることがあります。いちおう、宅地建物取引士の資格もありますので、わかる範囲でなら…と、相談にのったりすることがあります。

 

その中でも難題だったのが、

 

親の土地を相続した覚えもないのに、固定資産税の請求が来ている。

 

…というもの。

 

 

権利書は渡した、でも登記はしていない…

事情を聞いてみると、30年以上前に親が亡くなったあとに、土地の相続登記を一切していないというのです!

 

相談者には兄と妹がいらっしゃるのですが、相談者は「土地は妹にやると言って、権利書も渡した。だから、この土地はワシにはもはや関係ない!なぜワシに固定資産税の請求が来るのか!」と大激怒されていましたが、実のところ、その相続登記がなされていないのです。

 

権利書をぶんなげるだけで法律関係が移動するわけではありません。

 

権利書を盗めばその土地が手に入るわけではありませんし、世間一般的な認識として、権利書が過大評価されすぎな気がします…。あくまでも土地所有権を第三者に対抗するには、「登記」が必要なのが、日本の登記制度です。

 

登記簿謄本を見て、根本解決が難しいことが判明!

熊本法務局に土地登記簿謄本を取り寄せてみると、嫌な予感は的中。現在、登記名義人は亡くなった父親の名前のままとなっていました。

 

かつて不動産登記は現在のように義務ではなく任意でしたので、このようなケースはよくありました。(といっても、義務化は2024年4月1日からなので、最近になってからです。)

 

現在の状況まとめ
・遺産分割協議がなされておらず、当然、土地の相続登記もされていない。(死亡した父親名義のまま)
・その土地は他県にあるため、相談者も他の相続人も誰も使っていない。
・権利書を譲り受けたという妹さんはすでに死亡。
・妹さんのお子さんは全員相続放棄。連絡先不明。
・お兄さんとはたいへん不仲であり、生死不明かつ連絡先不明。

→相続人全員と連絡が取れない!

 

固定資産税を請求してきた役場と電話でお話をした結果、連絡が取れたのが相談者だけだったので、相談者に固定資産税の請求をせざるをえないということのようです。なお兄とは不仲ということで連絡先は相談者自身も一切知りません。

 

遺産分割協議前ということで、不動産は相続人で共有状態になっていますが、相続人の1人である妹さんは既に死亡していることから、妹さんの持ち分にはさらに相続が発生することになるのだと思われます。相談者としては、お金がないので固定資産税を負担したくないそうで、いっそ土地を捨てることができるならしたいようなのですが…。

 

土地を捨てられる!?相続土地国庫帰属制度

実際問題、このような状況で相続登記が困難で所有者不明になっていく土地が増えていくことを懸念した国が、相続土地国庫帰属制度というのをスタートさせました。ただし、

 

申請者が「10年分の土地管理費相当額」の負担金として、20万円を負担する必要がある

 

…ため、土地を捨てるのにもお金がかかるということです!

 

しかも国により審査があり、国が引取を拒否することもあります。審査手数料は1筆14,000円かかり、却下、不承認となった場合でも返金はありません。

 

固定資産税を払いたくないというのがスタートですので、20万円の負担があるという時点で論外となりました。ちなみに相続人全員で申請しなくてはいけないので、そちらもクリアしなければ制度が使えません。

 

 

相続土地国庫帰属制度で申請ができない土地(一部抜粋)

・建物がある土地
・土壌汚染(土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質)がされている土地
・境界の争いがある土地
・崖(勾配が30度以上、高さが5m以上のもの)があり、通常の管理にコストがかかりすぎるもの
・除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
・災害の危険により、土地や土地周辺の人、財産に被害を生じさせるおそれを防止するため、措置が必要な土地
・土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地

 

…ということで、今回の相談は、現在行き詰まっております…。どなたかお金のかからない解決方法をご存知でしたら、ご教示いただければと思います…。たぶんないけど。

 

所有者不明土地は、年々増え続けていっている。

この土地のように、相続登記を怠ることによって所有者不明土地が全国的に増加していることが問題となっています。

 

2016年時点でおよそ410万haの土地が所有者不明となっていると推測されるとのこと。何も対策をしなければ、2040年には約720万haの土地が所有者不明となってしまうとの推計です。

 

何かの公共事業で土地買収が必要な事業を行う際に、対象地にこのような所有者不明土地があった場合、所有者の探索からはじめなくてはならず、そうなると、公共事業にかかるコストが莫大なものとなってしまいます。

 

 

相続登記の義務化と、できない場合の救済策

そこで、2024年4月1日から相続登記が義務化となりました。「不動産を相続したことを知った日から3年以内」に登記をすることが必要となります。

 

しかもこの法律には罰則があり、申請期間内に登記をしなければ10万円の過料を課せられることになります。

 

しかし、実際には遺産分割協議が成立しなかったり、連絡が取れない相続人がいたりして、相続登記が困難であることがあります。

 

そんなときの救済措置として、相続人申告登記というものがあります。相続が開始したことと自分が相続人であることを法務局に申し出ることによって、相続登記義務を履行できる制度です。(相続人が複数いる場合は、申し出た方のみ義務を履行したことになります。)

 

今回のケースでは、相続人同士が不仲で遺産分割協議もなされておらず、連絡先も不明ということで、相続登記手続きは困難のため、相続人申告登記をすすめておきました。相談者は高齢のため、たぶんそれもしないんじゃないかなという感じですが…。

主にYoutubeのための動画作成やチラシ作り、Webサイト作成をはじめとした広報活動や、総務事務全般を担当いたします。動画作成やパソコン・ネットワーク・AV関係が得意分野ですので、なんでも聞いてくださいね。

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