
マイホームを検討する際、多くの方が「キッチンなどの住宅設備」や「内装材」など、わかりやすい部分に目を奪われます。
しかし、建築のプロとして断言できるのは、「本当に価値のある家は、壁の中(構造)で決まる」ということ!
今回は、完成すると壁に隠れて二度と見ることができない、しかし地震大国・日本において家を支える最大の功労者である「構造用金物(こうぞうようかなもの)」について、徹底的に解説します。
目次
そもそも「構造用金物」とは何なのか?
日本の伝統的な木造住宅、いわゆる「在来軸組工法(ざいらいじくぐみこうほう)」は、垂直に立つ「柱」と水平に渡される「梁(はり)」をジャングルジムのように組み上げることで、建物の骨組みを作ります。
かつての職人たちは、釘や金物に頼り切るのではなく、木材の先端に複雑な凹凸を彫り込む「継手(つぎて)」や「仕口(しぐち)」という高度な加工技術を駆使し、パズルのように木と木を噛み合わせることで家を建ててきました。これは、木特有の粘りやしなりを活かした、世界に誇るべき日本の知恵です。

しかし、現代の建築基準法が求める圧倒的な耐震性能の前では、こうした木の加工だけではどうしても「接合部の強度」を数値化・保証することが困難です。特に、近年の巨大地震で明らかになったのは、建物が激しく揺れる際、接合部に一瞬で数トンもの凄まじい「引き抜き力」が集中するということ。
木材同士を組んだだけでは、その衝撃で接合部が抜けてしまい、建物全体が崩壊するリスクを否定できません!!

そこで不可欠となったのが、伝統的な組み方の弱点を補強し、確実な強度を担保する「構造用金物」なのです。
今の家づくりは、先人の知恵である「木の組み方」に、最新の「金属の強さ」をかけ合わせることで、かつてないほどの安全性へと進化を遂げているのです。


それでは、ここからは代表的な金物たちを詳しく見ていきましょう!

羽子板ボルト
梁の脱落を防ぐ「羽子板(はごいた)ボルト」
まずご紹介するのは、その名の通りお正月の羽根つきで使う羽子板に似た形状の「羽子板ボルト」です。
役割と仕組み
主に、直交する梁(はり)と梁、あるいは梁と柱が離れないようにしっかり固定するために使用します。
専門用語解説【梁(はり)】
建物の水平方向に架けられる構造材。屋根や床の重さを支え、柱に伝える重要な部材です。
地震が発生すると、建物は前後左右に激しく揺さぶられます。この時、梁が柱からスポッと抜けてしまう「脱落」が起きると、屋根や床が崩落してしまいます。羽子板ボルトは、ボルトの力でこれらをがっちりと引き寄せ、脱落を防止します。
専門家の視点
最近では、より施工性が高く、木材を削る量を抑えられる「スクリュー釘」タイプや、金物が露出しない「隠し金物」なども登場していますが、原理はこの羽子板ボルトと同じです。「見えないところで、大きな手と手がつなぎ合っている」イメージですね。

コンパクトコーナー
柱の抜けを防ぐ「コンパクトコーナー(コーナー金物)」
柱と横架材(梁や土台など)の接合部にL字型に取り付けられるのが「コンパクトコーナー」などのコーナー金物です。
なぜこれが必要なのか?
阪神・淡路大震災では、多くの木造住宅が「柱が土台から抜ける」ことで倒壊しました。建物が揺れる際、特に建物の角にある柱には、上に向かって引き抜こうとする強い力が働きます。
専門用語解説【横架材(おうかざい)】
柱に対して横向きに設置される部材の総称。梁、桁(けた)、土台、母屋(もや)などを含みます。
コンパクトコーナーは、この「引き抜き」に対して抵抗します。昔は「かすがい」と呼ばれるコの字型の釘が使われていましたが、現在の基準ではより強固なボルトや専用ネジで固定する金物が主流です。

短冊金物
構造材のジョイントを強化する「短冊(たんざく)金物」
家を建てる際、10メートルを超えるような長い梁が必要になることがありますが、一本の木材で用意するのは運搬やコストの面で困難です。
そのため、複数の木材をつなぎ合わせて使います。その「つなぎ目(継手)」を補強するのが「短冊金物」です。
継手の弱点をカバーする
木材同士を凹凸でつなぐ「継手(つぎて)」だけでは、引っ張られる力に弱いため、上からこの短冊状のプレートを打ち付けて補強します。
専門用語解説【母屋(もや)】
屋根の最も高い位置にある「棟木(むなぎ)」と、壁際にある「軒桁(のきげた)」の間にある、屋根を支える水平材。

筋交い金物
地震の横揺れに立ち向かう「筋交い(すじかい)金物」
木造住宅の耐震性を高めるために欠かせないのが「筋交い」です。
柱と柱の間に斜めに入れる部材ですが、これ自体をしっかり固定しないと意味がありません。
三角形の原理を維持する
四角形のフレームは横からの力に弱いですが、斜めに一本棒(筋交い)を入れることで「三角形」ができ、形が歪まなくなります。
しかし、地震の衝撃でこの斜めの棒が外れてしまったら元も子もありません。
「筋交い金物」は、筋交いと柱、あるいは土台を強固に連結し、地震の際も「三角形」が壊れないようにキープし続けるための要(かなめ)なのです。

ホールダウン金物
最強の番人「ホールダウン金物(引き寄せ金物)」
数ある構造金物の中で、最も強靭で重要なのが「ホールダウン金物」です。
基礎と柱をダイレクトに結ぶ
アンカーボルトが「基礎と土台」をつなぐのに対し、ホールダウン金物は「基礎と柱」を直接つなぎます。
アンカーボルト
土台が基礎からズレないようにするもの(短い)。ホールダウン金物
柱そのものが基礎から引き抜かれないようにするもの(長い)。
特に2階建ての1階隅柱など、大きな引き抜き力がかかる場所には必ず設置されます。
これがあるおかげで、大地震が来ても「家が基礎から浮き上がる」という最悪の事態を防ぐことができるのです。
なぜ、自然素材の家こそ「金物」にこだわるべきなのか?
私たちは「無垢材」や「漆喰」といった自然素材にこだわった家づくりをしていますが、だからこそ構造金物の選定と施工には人一倍気を遣っています。
木材の「乾燥収縮」への配慮
天然の木材は、完成後も呼吸をし、わずかに収縮します。粗悪な金物や施工だと、木が痩せた時にネジが緩んでしまうリスクがあります。
私たちは、経年変化を見越した適切な金物選定と、確実な締め付け管理を徹底しています。
「意匠」と「性能」の両立
自然素材の家は、現しの梁(見せる梁)など、構造がデザインの一部になることも多いです。
その際、無骨な金物が見えてしまわないよう、高い強度を保ちつつも美観を損なわない施工技術が求められます。
まとめ:あなたの家選びの基準に「壁の中」を。
住宅のコストの多くは、実は完成したら見えなくなる部分——つまり「構造材」や「金物」、「断熱材」にかかっています。
「おしゃれな家」であることは大切ですが、その前提として「家族の命を守るシェルター」としての機能が備わっていなければなりません。
構造見学のススメ
ヨカイエでは、派手な広告を打つような大規模な構造見学会は頻繁には行っていませんが、お客様からのご要望があれば、いつでも「施工中の現場」をご案内しています。
羽子板ボルトが適正な位置にあるか?
ホールダウン金物のボルトは垂直に立ち上がっているか?
筋交い金物に打ち忘れはないか?
これらは、図面だけではわからない「現場の誠実さ」が現れるポイントです。ぜひ一度、ご自身の目で「家がどう守られているのか」を確認しに来てください。
「地味だけど、一番大事なもの」の話を、現場でじっくりとさせていただきたいと思います。
もっと詳しく知りたい方へ
「自分の検討している土地では、どのくらいの耐震補強が必要?」「耐震等級3にするにはどんな金物を使うの?」といった具体的な疑問をお持ちの方は、ぜひ無料の相談会にお越しください。構造の専門スタッフが、わかりやすく解説いたします。



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