
ZEHの基準が変わるって聞いたけど、ホント!?
経済産業省・資源エネルギー庁は5月12日の有識者会合で、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の定義を見直す方針を示しました。2027年からは、新定義での認証がスタートすることになると思われます。
2027年からは家づくりの省エネ補助金を受給したいときには、この新しい基準をクリアしなければならなくなると思われます!この新しい基準を説明するのはもちろん、そもそもZEHとは?という方もいると思いますので、まずは現行ZEHについて、おさらいしていこうと思います!(ご存知のかたは、この章は飛ばして新基準をご確認ください!)
ZEHってどういう概念ですか?
家づくりを考えている方は、調べていくうちに「ZEH(ゼッチ)」という言葉をよく目にすることになると思います。
ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)」の略で、住宅で消費する年間の一次エネルギー消費量を、断熱性能の向上や高効率な設備機器の導入により大幅に削減し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用することで、消費するエネルギー量の100%以上を自家発電でまかなう住宅のことを指します。
つまり、エネルギー収支を実質ゼロ以下にすることを目指した住宅です。
このZEHは、地球温暖化対策やエネルギー自給率向上のため、国が普及を強力に推進している住宅の形であり、政府は「2030年までに新築住宅の平均でZEH基準の実現を目指す」という目標を掲げています(※出典:経済産業省「ZEHロードマップ」)。
これに伴い、ZEH仕様の住宅は、国の補助金制度の対象となることが多く、省エネ性能の高い住宅を建てたい方にとっては知っておいて損のないキーワードです。
ZEH基準だけでは、補助金は少なくなる傾向!?
国土交通省の子育てグリーン補助金では、ZEH基準で申請する場合は40万円(建替がない場合)ですが、長期優良住宅として申請する場合は80万円(建替がない場合)と、長期優良住宅の方が金額が2倍大きくなっています!そのため、住宅会社が対応してくれるのであれば、長期優良住宅を目指すのをおすすめします(税制上の優遇があったり、地震保険が安くなったりもしますので、長い目で見ればお得です)。
長期優良住宅はZEH基準を満たすことも要件になっているので、つまり「長期優良住宅を取得できる住宅=ZEH水準以上の省エネ性能の住宅」ということ。そして、長期優良住宅はZEH基準に加えて耐震性や劣化対策、維持管理対策などが必要になるため、より補助金が高額になっているのかと思われます。
なお、現行ZEHよりももっと高い水準で省エネ性能を満たした住宅であるGX志向型住宅になると、2025年の省エネ住宅補助金としては最高額の160万円を受給できます!このGX志向型住宅の省エネ性能は、2027年から予定されている新ZEH基準と同等のものとなります。
住宅で消費されるエネルギー量を”ひとつの数値”で比較するための概念「一次エネルギー」
ZEH基準とは「エネルギー収支を実質ゼロ以下にすることを目指した住宅」と書きましたが、肝心のエネルギー収支をどうやって計算するのでしょう。住宅で使用されるエネルギー源には、電気、ガス、水道、灯油など、さまざまな種類があり、それぞれ単位や性質が異なりますよね。
たとえば、電気はキロワット時(kWh)、ガスは立方メートル(㎥)、灯油はリットル(L)といったように、単位もバラバラ。

えーっ!?じゃあ、どうやって住宅全体でのエネルギー使用量をひとつの数値で計算するの?
そこで、国が導入しているのが「一次エネルギー消費量」という共通の指標です。
これは、さまざまなエネルギー源を、原油換算などの方法を使って統一的な単位(MJ:メガジュール)に換算したもので、住宅で使用されるすべてのエネルギーを、同じ基準で比較・評価することが可能になります。これを一次エネルギー換算といいます。
一次エネルギーと二次エネルギーの違いとは?
「一次エネルギー」とは、自然界から得られる未加工のエネルギー源、すなわち原油、石炭、天然ガス、ウラン、水力、風力、太陽光、地熱などといった、直接採取されるエネルギーのことを指します。
「一次エネルギーがあるなら、二次エネルギーもあるの?」と思われる方もいらっしゃると思います。家庭で普段使っているエネルギーは、この「二次エネルギー」に該当します。
一次エネルギーを加工・変換して得られる電気、都市ガス、ガソリンなどを指して二次エネルギーと言います。省エネ計算にあたっては、二次エネルギーとして使っているものを、尺度を統一するために一次エネルギー換算して計算をしていきます。
このように、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)では、住宅のエネルギー性能を評価する際に「一次エネルギー消費量」を基準として用い、「使うエネルギー量」を「創るエネルギー量」で相殺する、という考え方をとります。結果、創るエネルギー量のほうが多ければ、ゼロエネルギー達成というわけですね。
しかし「一次エネルギー消費量<発電一次エネルギー量」だからといって、ただちにZEH基準を満たしているとは言えず、ZEHと認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
ZEHの要件
高断熱性能を備えていること
外皮性能(断熱性)において、定められた「外皮基準」(UA値)を満たしていることが前提です。UA値は住宅からの熱の逃げやすさを示した数値のことで、これが低いほうが住宅全体としての断熱性能が高いことになります。この高断熱仕様により冷暖房エネルギーの削減が実現されます。地域によって必要な外皮基準は異なり、当社のある熊本県合志市ですとUA値=0.6となります。
地域区分 1 2 3 4 5 6 7 8 ZEH基準 0.40 0.40 0.50 0.60 0.60 0.60 0.60 - ZEH+基準 0.28 0.28 0.28 0.34 0.46 0.46 0.46 -
再生可能エネルギーを導入していること
太陽光発電などの再生可能エネルギー設備を備え、自家発電が可能であること。この再生可能エネルギーにより、設計一次エネルギー消費量が、基準一次エネルギー消費量から100%以上削減されていること。(エネルギー発電量>消費エネルギー量)
再エネを差し引く前の設計一次エネルギー消費量が、基準一次エネルギー消費量から20%以上削減されていること
つまり、再エネによる「創エネ」効果を加味する前の段階で、省エネ設計によって設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量と比べて20%以上削減している必要があります(これを「設計一次エネルギー削減率」と呼びます)。
つまり再生可能エネルギー設備を搭載していたとしても、住宅自体の断熱性や設備の省エネ性能が十分でなければ、ZEHとは認定されないということ。ZEHとは、単に「太陽光発電を載せた家」ではなく、「住宅の省エネ性能(=外皮性能)と創エネの両立」によってエネルギー収支をゼロ以下にする、高性能な住まいなのです!
基準一次エネルギーと設計一次エネルギーとは
■基準一次エネルギー
基準一次エネルギーとは、建物の断熱性能や設備仕様に依存せず、地域区分や住宅の規模、間取り、方位などに基づいて、国が定めた「標準的な仕様」を仮定して算出された一次エネルギー消費量のことです。この値は、国が蓄積している過去の省エネ計画書(届出住宅の設計情報など)を基に、統計的に標準化されたモデルによって算出されます。つまり、基準一次エネルギーは、特定の住宅に固有の仕様を反映せず、比較のための「基準値(ベースライン)」として用いられるものです。この基準値と比較することで、その住宅が標準的な建物と比べて、どの程度省エネルギー性に優れているか(あるいは劣っているか)を評価することができます。
■設計一次エネルギー
設計一次エネルギーとは、実際の住宅の設計内容に基づき、導入する空調機器、給湯器、照明、換気設備、さらには太陽光発電の有無なども含めて、各設備ごとのエネルギー消費量を個別に計算し、それらを一次エネルギーに換算したうえで合計した値です。この値は、その住宅に固有の設備・仕様を反映しているため、現実的なエネルギー消費性能を示す数値として活用されます。ZEHなどの省エネ性能評価では、この「設計一次エネルギー」が「基準一次エネルギー」に対して何%削減されているか(=設計一次エネルギー削減率)が重要な指標となります。ZEHとして認定されるためには、この削減率が20%以上であることが必要です(※再生可能エネルギーによる創エネ効果を含める前の段階での数値)。
見直し後の新ZEH基準について
現在、経済産業省によりZEHの定義見直しが進められていて、2027年4月より、以下の基準になる方向性で検討されているそうです。
新ZEH基準
・(再生可能エネルギーをいれない状態で)設計一次エネルギー消費量35%以上削減(現在は20%以上削減)
・(再生可能エネルギーをいれた状態で)設計一次エネルギー消費量100%以上削減(変更なし)
・断熱等性能等級6以上の断熱性能(現在は断熱等性能等級5以上)
・蓄電池の設置(新設)
・高度なエネルギーマネジメント(HEMS)の導入(新設)
つまり、いまのGX志向型住宅と同じ基準ということですね。

蓄電池に加え、HEMSの設置も必須になりますので、「新ZEHに適合するため住宅がいくら高騰すると思ってるんだ」と驚愕したものです。
HEMSとは何ですか?
HEMSの主な目的は、家庭内での電気・ガス・水道などのエネルギー消費を「見える化」し、最適化・省エネルギーを実現することです。従来の住宅ではエネルギーの使用状況をリアルタイムで把握することが困難でしたが、HEMSを導入することで各家電製品の消費電力量や、太陽光発電による電力の発電・売電状況などを一元的に管理することが可能になります。
エネルギー収支が見れるようにするだけなら、価格の安いエネルギーモニターを設置するだけで済みます。(スマートフォンで閲覧するタイプであれば、モニター機器すら必要ありません。)
なお、HEMSは以下のような高度な機能を持ちます。
リアルタイムモニタリング
家庭内の各エネルギーの使用状況をリアルタイムに監視し、過去のデータとの比較も可能。自動制御・最適化
例えば、電気料金が高くなるピーク時間帯にはエアコンの設定温度を自動で調整するなど、無駄な消費を削減。遠隔操作
スマートフォンやインターネットを通じて、外出先から家電製品を操作可能。連携機能
太陽光発電システム(PV)や蓄電池、電気自動車(EV)などと連携して、電力の自家消費や売電の最適化を行う。
おそらくは、将来の省エネ補助金はこの新ZEHへの適合が求められるものと思います。
新ZEH基準 メリットまとめ
いかがでしたでしょうか。新ZEH基準となるGX志向型住宅はイニシャルコストは上がりますが、補助金以外にもメリットはたくさんあります。
①将来の電気代高騰におびえなくて良くなる。
「高断熱+HEMSの高度なエネルギーコントロール」によって冷暖房費は格段に安くなりますし、将来電気代が高騰したとしても、自宅に発電装置と蓄電池があれば、ほとんど電気を外部から買う必要がなくなるでしょう。
②ヒートショック対策になる。
家全体が熱が逃げにくい構造になるので、老後のヒートショック対策にもなります。冬場は重たい灯油など買わずとも、エアコンだけで家中が快適に過ごせます。
③災害発生などの停電時にも強くなる。
たとえば地震発生時などで電柱が倒壊して、電力会社から電気が一切供給されなくなったとしても、自家発電装置と蓄電池があれば、問題なく日常をおくることができます。蓄電池があると昼間発電したエネルギーをためておけるので、太陽光がなくなる夜間でも電気を使い続けることができます。
当社としては、GX志向型住宅(≒新ZEH仕様)に対応した商品を現在開発中です。
もちろん今の「OREGA」シリーズでもGX志向型に対応させることはできますが、規格化したものを今夏までにリリース予定ですので、期待してお待ちくださいね!
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