
静岡県熱海市での土石流事故を覚えていらっしゃるでしょうか。
熱海市伊豆山土石流災害は、2021年7月3日に静岡県熱海市伊豆山地区で発生した大規模土砂災害で、死者28名、建物136棟が被害を受けました。
逢初川の上流部、標高約390m地点で発生した崩壊が土石流化し、海まで約1kmにわたり流下。多数の家屋を巻き込み、甚大な被害をもたらしました。人的被害は、災害関連死を含め28名が死亡、建物被害は136棟に及びました。
この土石流の主な原因の一つとして、崩壊源頭部付近に造成されていた大規模な人工の盛土が挙げられています。静岡県の調査などにより、この盛土が行政への届出を大幅に超える規模で造成され、適切な対策が取られていなかった可能性が指摘されており、自然災害に人為的要因が複合した事例として大きく報じられました。
この災害を教訓に、全国で危険な盛土の総点検が行われ、危険な盛土を規制するための**「盛土規制法」**の成立につながるなど、防災・減災対策の強化が図られています。被災地では警戒区域が一時指定されましたが、2023年9月に解除され、復興が進められています。

切り土と盛り土
このとき、被害が拡大した原因が山間部の違法盛土。
盛土とは、土を盛ることで地盤を作る土木工事のこと。切土による造成に比べ、崩落の危険性の高い工事のため、この熱海の事故の前にも、盛土を規制する法律はいろいろとありましたが、盛土規制が十分ではないエリアがありました。そのため、危険な盛土を全国一律の基準で、包括的に規制する法制度が必要ということになりました。

これにより作られたのが、2023年5月に施行された「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)です。昭和36年に制定された宅地造成等規制法を改正したものです。
この盛土規制法の規制区域が、2025年4月1日より県全域を対象として規制区域の指定が行われることとなりました。いままでは荒尾市の一部だけの指定だったんですが、人が住まないような山奥にまで規制エリアが設定されているようです。

宅地造成等規制法の規制区域(熊本県指定案)
熊本市は西区をのぞいてほとんど規制区域はないようですが、逆にそれ以外は山間部であろうとほぼ全域に規制区域が敷かれることになりました!
その理由としては、熊本県の資料によると「災害が発生する危険性のない区域はないとの判断から、県民の生命・財産を守るため「全域」を規制区域に指定することとしました」とのことです。
なお、上記規制案に緑色の部分と、ピンク色の部分、灰色の部分がありますが、緑色の部分が特定盛土等規制区域、ピンク色の部分が宅地造成等工事規制区域になります。(灰色の部分は規制エリア外)
宅地造成等工事規制区域
市街地や集落など盛土等が行われれば人家等に危害を及ぼしうるエリア
特定盛土等規制区域
地形等の条件から、盛土等が行われれば人家等に危害を及ぼしうるエリア等
盛土が発生する工事としては、いろんなパターンが考えられますが、①宅地造成にかかるもののほか、②土木工事で発生した土砂を仮置き場に置く場合、③廃土処分業を営むときなど、大量の土砂が発生するさまざまな工事が考えられます。
今後、盛土が必要になるような、開発が必要な土地で家づくりをする場合には、この盛土規制法の手続きで費用の増加・着工に期間がかかることになります。これから家づくりをされる方は、頭の片隅にいれておくとよいかと思います。

ではでは!


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